StudioASPが取材した音楽スタジオ・インタビュー特集(全66回・2014年3月〜2019年10月)のアーカイブです。掲載情報は取材当時のものです。

音楽スタジオファイル Vol.26

SOUND ARTS 自由が丘店

サウンドアーツついて
サウンドスタジオノア直営のトータル・レコーディングスタジオ。4ブースで3Rhythm同時録音が可能なStudio 1 、ヴォーカルダビング・ミックスダウンに最適な1ブースのStudio 2&3、3つのコントロールルームを備え、温かみのあるアナログサウンドから豊富なプラグイン環境の最新DAWシステムまで、あらゆるレコーディングに対応。B1Fにリハーサルスタジオ「SOUND STUDIO NOAH自由が丘店」併設。自由が丘駅正面口から徒歩5分。
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サウンドアーツ公式サイト
東京都目黒区自由が丘3-7-18 ノア21 1F
TEL 03-5731-2111
受付時間 午前10:00〜プログラム終了迄

音楽スタジオの中の人に話を聞いてみた〜 SOUND ARTS自由が丘店 編

このコーナーは音楽スタジオでミュージシャンをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして、色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

SOUND ARTS初代マネージャー 今井豊

本日はSOUND ARTSの初代マネージャー今井豊さん、現マネージャー峯岸勇人さんにお話をお伺いします。峯岸さんには以前、ノアの秋葉原店オープン時に取材させて頂きましたが、こちらに異動されたということですか?

峯岸はい、そうです。去年の夏頃に、スタジオノア秋葉原店から異動してきました。

今井さんはいつからここに入られたのですか?

峯岸今井さんはスタジオノア1号店の代々木店オープン当時の店長なんですよ。

そうだったんですか! スタジオノアさんのレジェンドですね。

今井いやいや(笑)。峯岸くんには、映像やセルフ録音など、様々な使い方ができるレコーディングスタジオを目指そうということで来てもらいました。

峯岸さんは、これまでスタジオ立ち上げなどの重要な店舗を任されてきましたよね。

峯岸僕はノアに入ってから12年くらい経っているんで、スタジオのスタッフとしては古株というか、扱いづらい立ち位置になってきたので「こいつがいると若い人が上がって来れないからレコーディングスタジオにパスしちゃおう」ということかもしれないですね(笑)。

ナイスアシストです (笑)。ところで、こちらのSOUND ARTSがオープンしたのはいつですか?

今井オープンは1998年の11月23日です。当時はTASCAM DA-88などテープを使ったMTRが主流で、複数台をリンクして走らせて(レコーディングをして)いました。

1998年というと最近に思いますが、まだテープをつかっていたのでしょうか?

今井テープ、と言ってもVHSHi8など、本来映像を録画するためのテープに音声をデジタル録音するレコーディング専用のデジタルMTRというのがあったんです。

ProToolsが出てくる前ですか?

今井 いえ、ProToolsの歴史はもっと古いんですけど、当時のProToolsはまだ同時録音トラック数などの機能面や安定性に問題がありました。それで、音声データーを安定して録音するためにビデオテープをつかうデジタルMTRというのが主流だった時期あったんですよ。ProToolsがレコーディングスタジオで(メインのレコーダーとして)使われるようになったのは、パソコンやDAW Systemの性能が上がってきた2000年くらいだと思います。

なるほど。今井さんはレコーディングに関する経験があったのですか?

今井いや、全くないです(笑)。個人的に、そのデジタルテープMTRの一つであるADATで録音するようなことはやっていました。

レコーディングのことは、こちらに来てから覚えたのですか?

今井まあ私はマネージメントで、技術的なことはエンジニアに任せているので詳しくなくても大丈夫なんですが、それでもある程度はここに来てから覚えましたよ。

昔からある「レコーディング業」というのはやはり厳しい

SOUND ARTSでは、これまで以上に多様な客層にアプローチしていくとのことですが、プロ以外の利用者は増えていますか?

今井はい、おかげさまで一般層のお客さんが増えました。30代前後の人たちを中心に、シニア層というか60代の方まで幅広くご利用いただいています。

客層を広げるというのは、やはりレコーディングスタジオの経営的な部分なのでしょうか?

今井はい、それはあります。レコード会社さん、制作会社さんに使っていただくという、昔からある「レコーディング業」というのはやはり厳しいです。他店にくらべれば、(リハスタの)ノアを使ってくださっているバンドさんが沢山いらっしゃるとは言うものの、現状ではバンドでのレコーディング利用も大分減っている状況です。

なるほど…。最近はどのような使われ方が多いのですか?

今はボーカル録音での利用が最も多いです。ナレーションアフレコに対応した専用のスタジオも駒沢店に用意しました。とにかく幅広くあらゆるレコーディングのご要望に対応できるスタジオになっています。

ボーカルレコーディングスタジオというのも都内には沢山あります。SOUND ARTSの特徴というのは?

今井まず、マイクロフォンの選択肢の数が全然違います。価格帯で言うと、1本4、50万するマイクでも録音できます。他にも、ヘッドアンプコンプレッサーといった録音機器の違いはかなり大きいのではないでしょうか。その他にもサウンドスタジオノアでレンタルしている機材も全て無料でご利用いただけます。

さすがのスタジオノアクオリティですね。

今井録音機材自体の選択肢の数や、性能の違いもありますけれども、それ以上にアーティストさんの声質に合わせた選択ができるかどうか、という所も大事なポイントになります。ボーカリストとのマッチングが1番大事ですから。

リハーサルスタジオの方でもレコーディングの設備は充実していますよね。

今井そうですね。ノアのどのスタジオでも気軽にレコーディングできる環境は用意してありますし、依頼があれば、私どものエンジニアが各スタジオに行ってレコーディングをするということもやっています。エンジニア派遣という形ですね。

エンジニアさんがいつものリハスタに来てくれるのですね。ノア限定ですか?

今井基本的にはノアですが、依頼があれば他のスタジオにも行きます。他にも、ライブレコーディングをしたり、ノア都立大店 STEINWAYのフルコン(※フルコンサートグランドピアノ)が入っているピアノスタジオがあるので、そこでピアノのレコーディングをしたりしています。最近はライブ配信派遣サービスも始めました。

エンジニア系のスタジオによくある派遣サービスですが、ノアでもスタートしたのですね。

今井はい。ライブ配信はスタジオでも、スタジオ以外の場所でもできます。例えばこの前は、ノア高田馬場店の1番大きいCスタジオで、ビジュアル系のバンドさんが、ライブをやるのと同じようにセットを組んで、すべてマイキングしたものを、ProToolsの中で音をミックスしてライブさながらの音質で、映像と合わせてライブ配信するというサービスをしました。

カメラで取ったのをダダ漏れ配信するのとはワケが違いますね。さすが抜きん出てきます(笑)。

今井まあ、ノアのリハスタ各店舗で、「こういうことができますよ」という宣伝もしていますからね(笑)。リハーサルからアーティストさんがセルフで録音、プロモーションしていく所までお手伝いできる体制ができております。

銀座にあったカフェのアルバイトがノアとの出会い

それでは、続いて今井さんの音楽遍歴を教えてください。

今井音楽を意識しだしたのは高校生くらいですね。

高校生のときは、やはりボーカルですか?(今井さんはとても声がいい!)

今井はい、ボーカルと鍵盤が担当でした。

影響を受けたアーティストはいますか?

今井結構いますけど、エルトン・ジョンとかビリー・ジョエルです。80年代のAORに影響を受けました。

エルトン・ジョン! 初めての展開です。このインタビュー企画、みなさん基本メタル上がりなので(笑)。

今井え? そうなんですか(笑)

ライブ活動もしていましたか?

今井原宿ルイード(1989~2007)とかでやってましたね。25年前くらいかな。ポップスなんですけど、鍵盤、コントラバス、バイオリンとかクラシカル寄りの編成でやっていました。

今も活動中ですか?

今井さすがに今はやっていません(笑)。でも音源は残ってますよ。当時はいろいろなオーディションに出場してました。すかんちカステラTHE BOOMと同じオーディションにも出ていて、ゲストがX(X JAPAN)でした(笑)。89年くらいですかね。

X-JAPANまで!? それでオーディションの結果は?

今井アーティスト育成賞止まりでした(苦笑)。

まわりのバンドが強烈すぎでしたね(笑)。その後の経緯は?

今井仕事を探さないといけなかったので、銀座のカフェでアルバイトを始めました。そのバイト先がノアとの出会いということになります。

ノアがカフェから始まったという話は聞いたことがありますが、ノアはどういう経緯で音楽の方へ進んだのでしょうか?

今井カフェとは別に何か新しい事業を始めたいということになり、社長が音楽スタジオをやることを決めました。そこで、「音楽のことを知っている人はいないか?」ということで、バンド活動をしていた私が指名されたんです。

それでノアの最初のスタジオスタッフとして代々木店に入ったのですね。

今井今も、一緒に入った笠井くんという人が技術部門でやっています。

峯岸笠井さんも最初期メンバーですね。

今井ですね。最初、5人のスタッフだったんですが、その内の2人が残っています。

ノアは店舗数が多くて店長の異動も多いと思いますが、今井さんは?

今井1993年に1号店の代々木で5年間やって、その後、1998年からはここ自由が丘店一筋です。

ローテーションの多いノアとしては、異例なほど少ないですね。

今井そう思います。

リハスタじゃなくてサウンドアーツに入りたかった(峯岸)

一方、峯岸さんは多くの店舗を渡り歩きましたね。

峯岸下北沢店渋谷2号店新宿店秋葉原店、そして今ここですね。リハーサルスタジオに関しては、3店舗の立ち上げ店長を担当しました。でも僕は、元々はリハーサルスタジオじゃなくて、レコーディングのサウンドアーツに入りたくて面接も今井さんにしてもらったんですよ。その時は採用してもらえなかったので、リハスタのノアに入って、けっこうな遠回りをして、ようやくここに来たんです(笑)。

巨人に入りたかった高校球児みたいな展開ですね(笑)。

今井その頃、リハーサルスタジオの方が厳しい状況で、稼働率を上げようかということで優秀なスタッフが必要だったんです(笑)。

峯岸もう途中からサウンドアーツのことは諦めていましたけど、まさかの最後の最後にここに来ることになるなんて思ってなかったです。

縁ってホント不思議なタイミングで来ますよね(笑)。当初の希望が叶って何よりです。それでは最後になります。メッセージなどありましたらお願いします。

今井私たちは皆様の音楽活動を様々な形でサポートできます。何かを作り上げるということは、1人では限界があると思いますが、なにか不足しているものがあれば、私たちのネットワークの中で補いながら1つの完成形に仕上げていくことができますので、ぜひとも活用してください。

峯岸さんからもメッセージをお願いします。

峯岸プロの方以外でも、これから音楽を始める方、自分の音源を出したいという方、歳を取ってきて最後に遺作を残したいという方まで、幅広く何でもサポートできるレコーディングスタジオにしたいなあと思います。実際、遺作を作った方がいましたが、それが好評で売り切れちゃって、元気になって、またもう1つ作ろうということもありましたから (笑)。

最後の作品のつもりが、おかげで元気が出て再チャレンジだなんて、スタジオとしても、これ以上に無い嬉しいことだと思います。本日は貴重なお話をありがとうございました。

今井&峯岸ありがとうございました!

インタビュー&ライター 浅井陽(取材日 2016年4月)

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自由が丘駅(東急)
東横線と大井町線が乗り入れる東急電鉄の駅。おしゃれなカフェやショップ、スイーツ店が立ち並び、「住みたい街ランキング」では常にベスト3にランクイン。正面口ロータリーに立つ女神像「あおぞら」にちなみ、毎年10月に地域最大の街フェス「自由が丘女神まつり」を開催。
Alesis ADAT
米Alesis社が1991年に発売したデジタルMTR。当時、デジタルMTRはPCM-3348など数千万級のプロ向け製品しかなかったところへ、S-VHSテープを使った8トラックのMTRを実現した画期的製品。今はなき製品だが、当時のデーター転送規格がオーディオインターフェースのadat(エーダット)端子として生き続けている。
TASCAM DA-88
「ADAT」の大ヒットの後を追って、1993年に日本のTEACが発売したデジタルMTR。 ADATAがS-VHSを使うのに対してDA-88はHi8テープを採用。アマチュアユースにはADATAの後塵を拝したが、基本性能の高さ、同期機能の充実で、プロの現場でも長い間活用された。