StudioASPが取材した音楽スタジオ・インタビュー特集(全66回・2014年3月〜2019年10月)のアーカイブです。掲載情報は取材当時のものです。

音楽スタジオファイル Vol.32

西荻窪 Studio Akseli

Studio Akseliについて
西荻窪駅から徒歩3分。1スタジオ・1ブース・1コントロールルーム、1日1組限定の隠れ家的レコーディングスタジオ。ライブハウスのPA/RECエンジニア、フリーランスのエンジニアを経て、2012年10月「良い音を、なるべく低価格に提供したい」というコンセプトのもと、スタジオ・アクセリをオープン。リラックスして楽曲制作に集中できるプライベートな空間、ライブの現場で培ってきた経験を活かし、様々な角度からアーティスト活動をサポートしている。
Studio Akseli お問い合わせ
Studio Akseli公式サイト
杉並区西荻北3-13-5 M&IビルB1
TEL:03-6913-5030
受付時間:12:00〜22:00(TEL)
スタジオアクセリ

音楽スタジオの中の人に話を聞いてみた〜 Studio Akseli 編

このコーナーは音楽スタジオでミュージシャンをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして、色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

SOUND LEAF代表/レコーディングエンジニア 岩本夏来氏

本日は西荻窪Studio Akseli代表の岩本さんとプランニング担当の坂本順子さんにお話をお伺いします。西荻窪では比較的新しい設立のスタジオになりますね。オープンはいつですか?

坂本2012年の10月にオープンしたのでもうすぐ約4年になります。

レコーディングスタジオを始めるきっかけについて教えて下さい。

岩本18歳のときに吉祥寺のライブハウスに照明スタッフとして入って、24歳からPAを担当していました。現場の機材で簡単な録音しているうちに、レコーディングに興味をもったのがキッカケになります。

坂本さんも同じライブハウスにいらしたのですか?

坂本私も同じライブハウスで照明、ブッキング機材レンタルレーベル運営等をやっていました。

現場の仕事、ほぼ全部ですね(笑)。その後、岩本さんはレコーディングエンジニアに転向されたのですか?

岩本はい。といっても音響系専門学校を出たわけでもないし、まだ実績も無かったので、エンジニアとして雇ってくれるレコーディングスタジオはないだろうな、と思って。まずはフリーでPAをやりつつ、レコーディングの修行をしていました。

坂本いわゆる、出張レコーディングですね。

岩本他のスタジオに機材を持ち込んでレコーディング活動を続けていましたが、結局コネもないので、だったら「自分でスタジオを立てよう!」と、30歳の頃にこのスタジオをオープンしました。

どのようなスタジオにしようと考えたのですか?

岩本僕自身、ライブハウスのPA上がりで、多くのバンドさんと友達、という関係でしたから、仲間の手助けというのかな、なるべく安い料金でいい音を提供してあげたいというのが最初のコンセプトです。でも、やっぱり理想論の部分はあって、経営上ある程度の金額は設定しないといけないんですけどね(笑)。

坂本資金力では大手さんにどう考えても、敵わないし…。なるべく(コストパフォーマンスのよい)ミニマムなやり方で、1日1組のお客さん限定という方針でやっています。

ビジネス的にはフリーのままの方がよかったかな(笑)

実際にフリーランスでの活動から、自分のスタジオをオープンしてみてどうでしたか?

岩本音楽業界がこういう状況なので不安はありましたが、とても充実しています。フリーで出張レコーディングしていた時も楽しかったんですけど、自分のスタジオがあると、セッティングもしなくて良いし、細部まで自分で決められるし、バンドとほぼONE ON ONEなので、ワイワイやれて楽しいですね。でも、ビジネス的にはフリーのままの方がよかったかな(笑)。やっぱり投資が重なりますし。

スタジオの特徴について教えて下さい。部屋鳴りはどのような感じですか?

岩本僕が受け持っているジャンルで1番多いのがギターロックで、激しいバンドも多いので、スタジオの鳴りはややデッドにしています。

爆音を鳴らす場合はデッドな部屋の方が扱いやすいですからね。

岩本ドラムなんかも、自然な部屋鳴りもいいんですが、最近の若いバンドさんは『がっつりしたドラム音』が好きな子たちが多くて、タイトに録音できる方が喜ばれます。それと、うちのようなプライベートスタジオだと10帖以下の部屋が多いのですが、ここのブースは15帖程あります。まあ、大きいとは言えませんが、『3人で1発録りできるスタジオでこの料金はレアだ!』とレコード会社の方にも言っていただいています。

音楽不況と言われる中、スタジオ業界の競争も激しくなっていますが、何か影響はありますか?

岩本どうだろうなあ…。他店のことはわかりませんが、私自身、毎月ビビっています(笑)。毎年、売り上げは伸びているんですが。それでもやっぱり…。

坂本昔のように、半年前からレコーディング予定を立ててスタジオを予約する、というお客さんが減って、直前の予約が多いんです。その辺は(売り上げの)見通しが見えにくいのでハラハラしますよね。

岩本リハーサルスタジオでも、毎週定期的にバンド練習する人が減っていて、その場その場の流れで予約する人が多いそうですね。

競合相手はフリーランスで活動しているエンジニアさん

そういう話はよく聞きますね。競合になっている他店はありますか?

坂本そもそも、うちの規模だと、他のスタジオさんと競合しないんじゃないですかね。むしろ「よくうちのスタジオ見つけたね!」って思うくらい(笑)。

岩本(笑)。競合相手はスタジオよりフリーランスで活動しているエンジニアさんになるでしょうか。フリーランスのエンジニアさんってどの地域にもいると思うんですよ、「ここのライブハウスだとこの人」みたいなエンジニアさんが。彼らが現場で頑張ってる限り、そこから(バンドがレコーディングをするために)スタジオに出てこない…。その地域ごとに縄張りのようなものがあるんですよね(笑)。

なるほど…、ライブハウスはもっともバンドに近い現場ですからね。

岩本リハーサルスタジオだと、お客さまの多くが近くにお住まいの地元の方だと思いますが、レコーディングの場合は意外と地元の方は少ないですよ。そのかわり、気に入ってもらえれば、全国どこからでも来て頂けます。最近は沖縄から来ていただきました。

坂本先日は愛知から、福島からもいらっしゃいました。うちで音源を作ったバンドが、アルバムのクレジットにスタジオ名を入れてくれて、それを見て問い合わせをしてくださって、なんていうのも結構あります。

岩本フリーの時代からのお客さんが利用してくださっていて、そういう所からも口コミ的に広がっています。

口コミで広がるというのは音が素晴らしい証拠ではないでしょうか。ちなみに、リハーサルスタジオとしても利用できるのでしょうか?

岩本基本的にはレコーディング優先です。「レコーディングスタジオ専門」と行きたいところですが、空きが出た時に困るのでリハーサル貸しの設定もしていますが、現在は、ほぼレコーディングで埋まってる状況です。

坂本そういう時はご近所にある、楽音(LA.QUENE)さんなどのリハーサルスタジオをご紹介しています。

続いて音楽との出会いについて教えて下さい。まずは、岩本さんからお願いします。

岩本小学生の時に兄貴が聴いていたCDを聴いてから、ドはまりして常に歌ってるような少年でした。とくに、B’zと当時のアニメ主題歌を歌いまくっていました。 

当時のアニメ主題歌、となるとどのあたりの番組ですか?

岩本らんま1/2ドラゴンボールシティーハンターなどを熱唱していましたね。どちらかというとアーティストのタイアップ曲じゃなくて、アニメ専用の曲が好きでした。

言葉の節々に「本物ぶり」を感じさせられます。

岩本そこだけ抜粋されると、すごい特化しちゃってる人になっちゃうけど(笑)。やっぱり洋楽好きなエンジニアさん、がいいですよね?インタビュー的に(笑)。

洋楽は何が良いのか分かんなかった(笑)。

いえ、いや、そうですね…(笑)。洋楽は聴かなかった?

岩本洋楽はあまり好きじゃなかったです。エアロスミス、ボンジョビあたりまではなんとか聴けたのですが…。バンドもやっていたので、がんばって色々買ったんですけど、やっぱり、何が良いのか分かんなかった(笑)。

ある意味、筋金入りです(笑)

岩本さすがに、エンジニアになってサウンド的な観点に着目するようになってからは、洋楽ばかり聴くようになりました。でも、未だに洋楽は曲そのものが一向に頭に入ってこないんですよ(笑)。

では次に坂本さん、ライブハウスで仕事をするようになったきっかけを教えてください。

坂本高校時代、レッドウォーリアーズなんかのロックバンドが人気で、その影響もあって地元の横浜で活動していたロックンロール系バンドのローディーをやっていました。そのバンドのツアーで、色んなライブハウスに行くようになり、それで「照明をやりたいな〜」と思ったのがきっかけです。

最初からバンドをサポートするポジションで始まったのですね。音響芸術系のスクールには行かなかった?

坂本はい、当時は情報があまりなくて、専門学校のガイドブックみたいなものもすぐ手に入る状況じゃなかったし、それだったら「ライブハウスに入った方が早いんじゃないか」と思って、直接現場で照明を始めました。

聴く音楽もやはりロック系バンドが中心ですか?

坂本正直いって、その頃にはもう音楽はほとんど聴いてなかった(笑)。在籍していたライブハウスの影響で、ギターロックやパンクロックとかは聴くようになったんですが、それでも家ではもう聴いたりしませんね。現場に音が溢れているせいか、業界に入ってからのほうが音楽と距離があるのかも(苦笑)。

岩本僕も現場の影響で、音楽は聴かなくなっちゃった(笑)。

では最後に、Studio Akseliからメッセージをお願いします。

坂本地下で入り口もわかりづらく、一見入りにくい所ですが、一歩足を踏み入れてくれれば、気楽なスタジオだとわかっていただけると思います。まずは見学だけでもよいのでお気軽にお越しください。

岩本常連さんも、新規さんも、音楽以外でもワイワイやりたいので、ぜひ遊びに来てくださいね!

お二人の親しみやすさ、伝わってきました。本日は貴重なお話をありがとうございました。

インタビュー&ライター 浅井陽(取材日 2016年8月)

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個性派ぞろいの中央線沿線でひときわ異彩を放つ街、にしおぎ。「住みたい街」トップ常連の吉祥寺と荻窪の間に位置するニッチ、レトロで小ぢんまりとした町並みが魅力。商店街の数は区内屈指、仲通りの「ピンクの象」や「西荻窪六童子」などシンボルもユニーク。改札を出て左が北口(バスのりば)、右が南口。Studio Akseliへは北口からSEIYUを通り抜けると便利、徒歩3分。
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