StudioASPが取材した音楽スタジオ・インタビュー特集(全66回・2014年3月〜2019年10月)のアーカイブです。掲載情報は取材当時のものです。

音楽スタジオファイル Vol.55

SOUND STUDIO NOAH 渋谷2号店

サウンドスタジオノア渋谷2号店について
渋谷駅ハチ公口から徒歩8分、ライブハウス&クラブが密集する宇田川町の渋谷カルチャー発信中心エリアにあり、バンドマン、DJ、ダンスパフォーマーと、音楽的多様性を反映した渋谷最大級スタジオ。3ピースバンドに好評のSst、スタンダードなAst・Bst、広々と使えるEst16帖・Cst22帖などバリエーション豊富な全14部屋。くつろぎながら充実したミーティングができるロビーは専用の喫煙ブースで分煙を徹底。専用エレベーターで機材搬入もスムーズ。
サウンドスタジオノア渋谷2号店お問い合わせ
サウンドスタジオノア渋谷2号店公式サイト
東京都渋谷区宇田川町39-2 B1F
TEL:03-3780-5766
24時間営業

音楽スタジオの中の人に話を聞いてみた〜 スタジオノア渋谷2号店 編

このコーナーは音楽スタジオでミュージシャンをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして、色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

サウンドスタジオノア渋谷2号店 店長 佐藤孟氏

本日は渋谷2号店店長の佐藤孟さんにお話をお伺いします。最初にスタジオノア渋谷2号店、各スタジオの紹介をお願いします。

バンド練習向けの10帖〜16帖のGst、Bst、Est、プロのリハーサルにも対応した22帖のCst、3ピースバンド向け7帖〜8帖のSst・Ast、ボイスレッスンや弾き語りナレーション録音に最適なボーカルブースを含めた全14部屋をご用意しています。

各部屋とも万全の装備ですね。とくに注目のポイントをいくつか教えて下さい。

一番大きなCstですね。ライブステージさながらの空間でリハーサルができ、ドラムセットはSONARSQ1シリーズ、シンバルはZildjianK Customシリーズ、どちらも高価なプロ向けの楽器を設置しています。他にも、E-1スタジオのドラムはdwのセットに、シンバルはMEINL(マイネル)のByzance Brilliantを組んでいます。ドラムマットも同じMEINLのものなので雰囲気がありますよ。

部屋によって壁の色が異なるのも特徴的ですね。

はい。常設の楽器やアンプ、PAパワーアンプも部屋によって違うので、実際に使っていただくと各スタジオの個性がわかると思います。

佐藤さんがスタジオノアに入った年と、渋谷2号店の店長になった時期を教えて下さい。

2014年12月に駒沢店にアルバイトで入ったのが最初です。それから、秋葉原店を経て初台店で1年半ほど店長を任され、昨年(2017年)11月に渋谷2号店の店長として配属されて、現在に至ります。

渋谷2号店はライブ、クラブカルチャーの中心エリアにありますが、佐藤さんがみてきた他店舗との違いは?

音楽ジャンルの傾向でいうと、クラブやEDM系が圧倒的に多いですね。DJやダンサーさんの多さは渋谷ならではという感じです。駒沢店、初台店ではプロのリハーサル利用が多かったので、地域性の違いを渋谷に来てダイレクトに体感しています。

渋谷2号店の稼働状況について、とくにバンド利用者の傾向について教えていただきたいです。

この店舗に関しては、数値だけをみると伸び悩んでいる部分はあります。まだ、昨年の11月に着任したばかりなので、具体的な施策はこれからですが、僕自身バンドマンだったのでバンドの活性化については重要だと認識しています。

正直、とくに若い世代のバンドは以前に比べ「激減」していると見ています。佐藤さんの個人的な見解でよいのですが、このようになった背景をどう捉えていますか?

やはり、バンドが出られるメディアが少ないという状態が長く続いていることが、なかなか盛り上がらない原因の一つだと思います。テレビでも、DJとかフリースタイルといったカルチャーを取り上げる番組はたまにありますが、アマチュアやインディーズバンドにスポットがあたらない…。

そういう番組は、今となってはほぼ皆無と言っていい状況だと思います。

かといって、現実的にはメディアを動かすというのも難しい…。バンドブームの頃には、イカ天などアマチュアバンドのみの番組があったと聞いていますが。

ライブハウスやクラブ、それと出演者さんたちとの交流も深めていきたい

ブームの再来をすぐには期待できない今、若い世代にバンドを始めてもらうには、どうすればいいでしょう?

う〜ん、僕自身が経験したことでしかお話できないのですが、最初のきっかけとして、自分の「憧れ」になるものに接する機会を増やすことじゃないでしょうか。たとえば、高校生のバンドって友人をライブハウスに呼んできてくれます。だから、高校生中心のイベントを組むと、かなりの人数のお客さんが入ります。

はい、思い返すとそう(高校生は友だちを連れてくる)ですね。大人になるとなかなかライブハウスには誘えない…。

僕が横浜でバンド活動をしていたときの話ですが、高校生バンドに混ざって、必ずプロ、セミプロレベルの上手なバンドが1つ組まれるイベントがあって、友だちに誘われて来たライブハウスで、凄いレベルのバンドをリアルに体験できる場となっていました。

友だちのバンドを見に行ったら、凄いモノを見てしまった! というような。

そうやって、プロの演奏に触れる機会を作ることで、バンドの数やコアな音楽ファンを地道に増やしていくことにつながると思います。CDや音源が売れない中、音楽フェスやライブは伸びているので、もっと学生のイベントに、プロを呼ぶような企画を増やしたらどうなのかな?と思います。言うのは簡単ですけど(笑)。

そのような現状を踏まえて、音楽スタジオの運営面から、具体的なプランは考えていますか?

もちろんです。せっかく渋谷という立地なので、ライブハウスやクラブ、それと出演されるバンドさんたちとの交流をもっと深めていきたいと考えています。まず始められるところから、ではありますが、ゴールデンウィークの企画として渋谷エリアのクラブ・ライブハウス出演者向けのちょっとしたサービスを用意しています。

ライブシーンとの距離を縮めるという点では、まだまだ開拓の余地がありそうですね。

正直、これまでライブハウスとのつながりが希薄でした。個人的には、音楽スタジオとしてもシーンを作っていくことに積極的に参加したいところです。まだ、具体的に発表できることは少ないのですが、単発の企画で終わらずに、お互い相乗効果が生まれるような関係が築けるよう、ライブハウスやクラブさん側にも働きかけていきたいと思います。

ゲームセンターの「音ゲー」で聞いた洋楽パンクに衝撃をうけた

次に、音楽との出会いについて教えてください。佐藤さんの出身はどちらですか?

湘南(藤沢市)出身です。91年の生まれで、中学でドラムをはじめて、中三のときに同級生とバンドを組みました。基本は小学生の頃から野球少年だったので、練習の合間に、自分で教則本を買って自己流でやっていました。

野球少年が音楽にハマったきっかけは?

中1のときだったと思いますが、ゲームセンターに、確かビートマニアという「音ゲー」があって、そのゲームの題材曲としてGreen DayやSum41、The Offspringといった洋楽の曲が流れているのを耳にして衝撃を受けました。それまでJ-POPしか聴いていなかったので、本当に衝撃的で、そこでゲームをやっていなかったら今の仕事はしていないくらいです。

ゲームがきっかけというのは、当インタビューでも初めてです。

ゲームというのは割と今っぽい出会いかもしれないですね。今だとYouTubeなのかな? そのゲームがきっかけで、NOFX、NO USE FOR NAME、それにHi-STANDARDなどのメロコアにどっぷりハマリました。

平成生まれらしい音楽との出会いですね。高校でもバンドを?

高校でも野球はかなり真剣にやっていたので、ドラムやバンド活動は週一の休みのときだけでした。バンドを本格的にはじめたのは、野球部を引退した高3の夏からで、当時、湘南台の個人スタジオで練習して、善行Zで初ライブもやりました。

それから本格的に音楽活動を?

野球はやりきった感、というか燃え尽きたので、大学からはバンド一本で、ラウド系のオリジナル曲でレコーディングをしたり、横浜にあったLizardというライブハウス等で活動したりしていましたが、地元ではそれなりに動員を持っていて、イベントを打てば100人くらいは集めていました。

それはすごい。そこまでいけば当然プロを目指しますよね。

はい、大学卒業後も就職しないで、バンドで食っていこうと思っていたので、就活もしていませんでした。

バンドに自信があったのですね。

いや、そうでもなくて(笑)。半年くらいバイトをしながらバンド活動中心にやっていましたが、周りはみんな就職して、状況が大きく変わるなか、少し心が揺らぎ始めていたというか。このままでいいのかなぁ、と悩み始めていました。

現実を見据える時がやってきたと?

はい。家庭の事情も重なったことから、その年の秋にバンドを脱退して、そこで僕のバンド時代は終わりました。それから、心新たに就活を始めて、スタジオノアに行くことを決めました。

野球もバンドも、全力で打ち込んで終えるときは潔く、という感じですね。その後、どのような考えで就職活動を進めてきたかを教えてください。

大学では経営学部だったので、経理、事務関係も考えましたが、最初にやる仕事は好きなことがいいなと思って、音楽業界を中心に探しました。

“ノア=音楽スタジオ”のイメージとなるくらいの看板を背負っていると思っています

すでに音楽業界全体が景気の良い状況ではなかったですよね。不安はありませんでしたか?

それはあまりなかったです。というより、小学校から野球と音楽しかやってこなかったので、これまでの経験を活かすなら音楽関連しか選択肢はないなと思って。最初は、よりアーティストに近いA&Rのような業種も候補にしていましたが、最終的に音楽スタジオに決めました。

音楽スタジオを選んだ決め手は?

先ほど述べた、高校時代から通っていた湘南台の音楽スタジオのオーナーさんの影響は大きかったです。個人経営で、地域密着の2部屋しかない小さなスタジオなのですが、音楽に限らずいろいろな話をしてくれる方で。

音楽スタジオの仕事が、どういうものかを分かっていた?

そうですね、音楽スタジオは、部屋や楽器を貸すだけじゃなく、アマチュアからプロ、あらゆるジャンルのバンドと接することができるし、バンドを始める若い子や初心者の方に、自分の経験を伝えられる場所だなと思いました。

好きなこととはいえ、経営学部から音楽業界というのは、諸条件から二の足を踏むことはなかったですか?

長くバンド活動していたので、音楽の仕事の条件があまり良くない所が多いことは理解していました。休み無しで働いて月15万とか、そういう所も見てきましたから(笑)。そんなことより、どのようなところであれ、自分の仕事をがんばって上に登りたい、その気持ちのほうが大きかったですね。あ、ちなみに、ノアの条件はしっかりしていますよ(笑)。僕が入った頃に比べても、最近はさらに良くなっていますからご安心頂きたいです。

それでは最後に、本日もスタッフが店内を奔走されていましたが、店長としてスタッフに求めること、心がけていることを教えてください。

何に対しても好奇心をもって積極的に取り組んでほしい、というのを前提に、ノアのイメージが音楽スタジオのイメージ、くらいの看板を背負っているというプライドとプロ意識をもって頂きたいです。まあ、背負いすぎてプレッシャーに感じないよう、僕としては、仕事、職場が楽しいと思える環境づくりを努めていきたいと思います。

本日は貴重なお話ありがとうございました。これからもStudio ASPではスタジオノアの動向に注目していきますので、よろしくお願いします。

MUSIC-MDATA編集部(取材日 2018年4月)

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渋谷駅ハチ公口を出て、巨大スクリーン見上げながら 斜めに渡るスクランブル交差点(テーマソング『わくわく渋谷センター街』より)。アーチの入口のメイン通りとセンターこみち、渋谷を貫く井ノ頭通り、宇田川通り、夢二通り…。かつて渋谷川に流れ込んでいた暗渠「宇田川」流域に発展してきた宇田川町を中心とする繁華街。渋谷系と呼ばれる音楽ムーブメントの発信地で、その素地となってきたレコード店や老舗の小箱クラブ・DJ bar、ライブハウスが軒を並べる。
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