音楽スタジオファイル Vol.49
ON AIR 大久保スタジオ
- ON AIR大久保スタジオについて
- 90年代初頭より音楽発信源としてシーンの一翼を担ってきた「ON AIR」の名前を受けつぐ唯一のスタジオ。JR大久保駅から徒歩2分の好アクセス、専用駐車場22台完備。プロのツアーリハーサルに対応した新宿エリア最大級80帖をはじめ、屋上バルコニー付きワンフロア占有型のレコーディングスタジオなど、4フロアに全5スタジオを揃えている。2017年より土日祝限定でスタジオライブ利用もスタート。プロユースのみならず、広くON AIRの門戸を開いている。
- ON AIR大久保スタジオ お問い合わせ
- ON AIR大久保スタジオ公式サイト
東京都新宿区百人町1-22-11
TEL:03-5389-7676 (旧)
ご利用はTELまたはWebから予約受付
音楽スタジオの中の人に話を聞いてみた〜 ON AIR大久保スタジオ 編
このコーナーは音楽スタジオでミュージシャンをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして、色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。
本日はON AIR大久保スタジオのレコーディングエンジニアで音響・スタジオライブ主任の久我元大さんにお話をお伺いします。名門スタジオとして広く知られています。まずはオープンの経緯などをお聞かせください。
僕は2010年頃の入社で、設立当時のことはくわしく分からないのですが、24年ほど前にオープンしました。当時はレコーディング専門の「ON AIR麻布スタジオ」、リハーサルメインの「ON AIR新宿」、系列店としてライブハウスの「ON AIR EAST」、「ON AIR WEST」がありました。
当時の「ON AIR EAST/WEST」は現在のTSUTAYA O-Groupの前身となるライブハウスですね。
そうですね。後に、経営の方で色々あって現在のON AIR系列はこの大久保スタジオだけとなっています。
ON AIR大久保スタジオといえばプロユースのリハーサルスタジオという印象ですが、特徴を教えてください。
はい、おかげさまでリハーサルスタジオの方は、アーティストのツアーゲネプロなどプロの方に多くご利用いただいています。レコーディングスタジオも昔からやっているのですが、こちらは、リハスタほどは知られていないようですね(苦笑)。とても使い勝手のよいスタジオなのですけど。
今日は、レコーディングスタジオのことについて詳しくお伺いしたいと思っています。利用者層、特徴を教えてください。
プロの方、インディーズ、アマチュアの方まで幅広い層のお客様にご利用頂いています。大きすぎず、小さすぎず、程よいサイズの部屋で、バンドの一発撮り、ボーカルや楽器のダビングどちらにも使いやすく、料金も手頃ですし、バランスの良い設定だと自負しています。
スタジオの音響特性、サウンド面はどうですか?
レコーディングスタジオとしては『ややライブ』な方に入ると思います。適度な残響が、ドラマーさんやエンジニアさんにも好評です。ドラムの場合、デッドすぎると叩きづらい、という話も良く聞きますからね。
スタジオの気軽さを生かして「スタジオライブ」を企画
スタジオでライブも出来るようになったとお伺いしましたが、くわしく教えてください。
今年(2017年)からはじめました。スタジオの気軽さを生かして、まだ駆け出しのバンドさんや、ヒーリングミュージック、ストリートミュージシャンなど、いわゆるライブハウス向きではない方々にも使いやすいような「スタジオライブ」を企画したつもりです。
確かにライブハウスの出演となると一つハードルがありますからね。
土日祝日限定の開放とはなりますが、そういう方たちに良い条件でライブが出来る場所を提供しています。基本的には、チケットノルマとして課しているものはありません。10人くらいは呼んでくださいね、というスタンスです。
最近、(他店でも)スタジオライブをはじめたという話を聞きました。スタジオライブをはじめる理由や狙いはどこにあるのでしょうか?
少し真面目な話をすると、音楽業界全体としてCDが売れないなど、色々な問題を抱えているなかで、まずは身近なところから音楽の良さを知ってもらわないと何も始まらないよね、というところです。たくさんある『トライしていかないといけないこと』の中の1つだと思います。そんな中でアーティストやミュージシャンが育っていったら嬉しいです。
レコーディング中におもわず泣いてしまうことも
エンジニアの現場において、久我さんにとってレコーディングの醍醐味について教えてください。
やはりミュージシャンの圧倒的なプレイを目の当たりにしたときですね。疲れが吹き飛ぶぐらいの感動があります。そういうのを見ると、『音楽やっていてよかったなあ』って思います。レコーディング中におもわず泣いてしまうこともありますよ。
最近で印象に残ったレコーディングはありましたか?
柔らかな雰囲気の女性のドラマーさんで、正直『大丈夫かな?』と思うくらい、ふんわりした方だったんですけど、『じゃあレコーディング入りまーす』となった瞬間から、人が変わったかのような縦横無尽のプレイを披露してくれました。しかも1発オッケーでしたよ。
ちなみになんというドラマーさんですか?
ごめんなさい! ここでは言えないですが、某ドラム雑誌の企画での演奏です。他にもプロでもアマチュアでも、今まで聴いたことがない音楽や演奏を聴くとテンションが上がります。
それでは逆に、『これはどうしたものか!?』という現場はありますか?
赤裸々に言っちゃいますと、正直もっと練習してきて!という場面も稀にあります(苦笑)。あとバンド内で延々と議論が始まってしまったり、練習が始まったり。せっかくのレコーディングの時間が、クリエイティブな作業に使えないのは、もったいないですからね。
なるほど、はっきり言いますねー(笑)。
いやいや、結局あとが大変になって全体の完成度が下がることになりますからね。それと、アイドル系の方たちの録りは、どうしても演者さんが音楽専門の方々ではないので、少し大変なこともありますね(苦笑)。
そういう時はエンジニアさんの腕にかかってきますね。どうやって対処していくのですか?
もう頑張るのみです(笑)! おかげでノウハウは身についています。
次に、久我さんの音楽的なバックグラウンドについてお聞かせください。
父親が大の音楽好きで、幼い頃から、家では常に音楽がかかっている環境でした。小学生でピアノを習いはじめて、中学時代はバンドと吹奏楽、高校からトランペットでオーケストラ部に入りました。そこでクラッシクにはまって音大に進みました。途中で、クラシックよりポピュラーミュージックのほうが楽しいかも、となって。
ピアノ、バンド、吹奏楽、オーケストラと、さまざまな種類の音楽を網羅していますね。
良く言えばそうなるのかな?でも昔は、『広く浅く』みたいな感じがイヤだったんですが、今となっては、ようやく『これで良かったんだ』と思えるようになってきました。
レコーディングスタジオのエンジニアとして、頼もしいと思いますよ。
ありがとうございます。僕自身、音楽はジャンル問わず好きなので、どんな音楽でも大歓迎です。
打ち合わせは、演者さんが求めている音を知るチャンス
それでも、久我さんにとっては「未知のジャンル」の音楽が来る場合もありますよね。そんなときはどうするのですか?
そのようなときは、そのジャンルの音源をたくさん聴いて、どういう音が好まれているのか等、自分なりに傾向をつかんで挑みます。あとは、打合せですね。打合せというのは、基本的に、演者さんの不安要素を解決するものですが、同時に僕にとっては、演者さんが求めている音を知るチャンスなのです。最近は、事前の打合せをしっかりしてからのレコーディングが増えています。
それはとても心強いです。それでは、最後に、ちょっと余計な質問ですが(笑)、久我さんのエンジニアとしての失敗談もお聞きしていいですか?
アシスタント時代の話ですが、素晴らしい演奏をしてくれたのにも関わらず、まさかの録音してなかった、ということがありました。アシスタント時代に多くのエンジニアが経験しているとは思いますけど(苦笑)。
血の気が引きそうですね(笑)。
そういうミスって、ミュージシャンの方が快くやり直してくれますよね。こちら側の空気たるや、凍り付いていますけど(苦笑)。でも、そういう経験を経て、失敗を回避する術を身につけていきました。
本日は、普段聞けないようなエンジニアさんの本音まで、貴重なお話をありがとうございました。最後にON AIR大久保スタジオからメッセージをお願いします。
レコーディングもスタジオライブも、多くの方に気軽にご利用頂けるスタジオですので、ぜひ来て下さい。まずはお気軽にお問い合わせください。
インタビュー特集一覧(バックナンバー)