音楽スタジオファイル Vol.15

渋谷 SOUND MARKET

SOUND MARKET について
渋谷マークシティー裏、30年以上の歴史を持つ老舗リハーサルスタジオ。撮影やゲームなどの音響スタジオを設営する会社でもあるため、SOUND MARKETにおいても、各部屋での音の鳴り方を変えるなど、そのノウハウを存分に活かしている。『最新鋭の機材を取り揃えているわけではない』と語りながらも、ハードウェア類の充実など、利用者の『使い勝手の良さ』にはこだわりを持つ。そんな『裏方の気配り』こそが、スタジオ激戦区渋谷で生き残り続ける所以なのであろう。
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SOUND MARKET公式サイト
渋谷区道玄坂1-15-3 プリメーラ道玄坂1F
TEL 03-3464-9388
予約受付時間 10:00〜23:00

音楽スタジオの中の人に話を聞いてみた〜 SOUND MARKET編

このコーナーは音楽スタジオでミュージシャンをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

渋谷SOUND MARKET ハットリコーイチ氏
サウンドマーケット公式HP / facebook

本日は渋谷SOUND MARKET、スタッフの“ハットリコーイチ”さんにお話をお伺いします。かなり歴史のあるスタジオだと聞いています。

30年以上前からあるスタジオです。立ち上げの経緯など詳しくは知らないのですが。

ハットリさんがSOUND MARKETに入ったのはいつ頃ですか?

10年くらい前、だいたい2005年くらいか、それくらいです。

だいたい…(笑)。

自分の経歴とかあんま覚えてないんですよ (笑)。

リハーサルスタジオ以外の業務も行っているそうですね。

スタジオ設営や設備、もしくは納入などもしています。SONYのゲーム用のスタジオや、Canonのスタジオなどを作ったと社長から聞きました。映像を撮る時には、当然、音声も付けますからね。その為のスタジオなのだと思います。

会社としては音響関連のスタジオ設営業務の方がメインという感じ?

そうですね。会社自体の規模は小さいのですが、ウチの社長は、そういうノウハウを持ってる人間なので、いつも相当に忙しそうにしています。

スタジオを見せてもらいましたが、Cスタジオのギターアンプは半端ない量でした(笑)。

社長が色んなところから集めてくるんですよ。音響スタジオに納品されるアンプを貰って来たり、閉鎖するスタジオから貰って来たり(笑)。

マーシャルのベースアンプは初めて見ました。

マーシャルのベースアンプは昔は結構あったんですけどね。昔は、そこまで低音や高音の出音にシビアじゃなかったらしいので、わりとギターアンプのメーカーからも出ていたようです。

それにしてもすごい量です。社長さん、収集癖があるんですね(笑)。

でしょうね。最近も二輪免許とってバイクを買ったとSNSにアップしてましたし(笑)。ミュージシャンでも機材含め色んなモノを集める人いますよね。そういう類の人なんだと思います。

そんな社長さんは、どういうビジョンでこのスタジオを運営しているのでしょうか?

まずは「お安くお手軽に」でしょうね。

確かに料金は安いです。

そのためか、お客さんも、機材をあまり知らない若い子か、もしくは、ジャズコーラスツインリバーヴさえあればどうにか出来るというベテランさんが多いです。中堅クラスの機材にこだわりの強いミュージシャンさんなんかはあまり来ないですね。

利用者層が二極化してるんですね。以前、僕もここのスタジオを使用したことがありますが、部屋鳴りが非常に良いと思いましたが。

僕もそう思ってます。それこそが社長のノウハウなんです。実は4部屋それぞれの鳴り方を変えてあるんです。

僕はドラマーでもあるので、ハードウェア類がしっかりしていないスタジオは嫌なんです。

それは興味深いですね、詳しく教えて下さい。

Aスタジオはナチュラルな鳴り、Bスタジオはラウドな響きに、Cスタジオは一番広いですがデッドな音に、Dスタジオは最も小さい部屋ですが、あえてデッドな鳴りにしてます。

一番大きいCスタジオをデッドにした理由は?

広い部屋は大人数のバンドに利用される可能性がありますから、全部の楽器が鳴りすぎてしまうと収拾が付かなくなってしまいます。なので、あえてデッドな響きにしています。

なるほど、逆に一番小さなDスタジオもデッドなのは?

これは逆に、小さすぎて鳴りすぎると、音のレスポンスが早すぎて、これまたカオスになってしまうということからです。

そこまで考えているとは感激です。他にこだわっているポイントはありますか?

例えば、僕はドラマーでもあるので、ハードウェア類(編注・シンバルスタンドなどドラム本体を支える機材)がしっかりしていないスタジオは嫌なんです。

確かに、ドラムのハードウェア類、シールドなどの備品など、楽器やアンプ以外のパーツも大事ですね。

そういう細やかな部分への気配りの方が、ミュージシャンに対して快適さを提供出来ると思ってます。なので、ここに入った時もハードウェアを一新しました。あと、僕が腰痛持ちということもあり、椅子類もちゃんとしたものを揃えるようにしました。練習で身体壊してしまったら元も子もないですから。

僕もヘルニアで散々だったので、その気配り、最高に嬉しいです(笑)。

常に予備も用意していますので、お客さんには、気になる点はどんどん言って頂きたいです。

ハットリさんと音楽の出会いはいつごろでしょうか?

ウチの親父が音楽が大好きでして『ジャズ以外は音楽じゃない』というタイプの人間でした。

音楽一家ですか?

いや、当の本人は板前なんですけどね(笑)。

どういうことですか(笑)。

ね(笑)。まあ、そんな音楽好きな親父なんで、物心つく前から、家には音楽が溢れてました。僕がまだ赤ん坊の頃に、寝ている横で、とんでもなく大きいスピーカーでガンガンにジャズを流していたそうで、「この子は、音楽が大好きになるか大嫌いになるかのどっちかだね」なんて言っていたそうですよ。

これは絶対に外せない要素だと思うのですが、親子そろって『鉄道ファン』なんです。

昭和のノリたまんないすね(笑)。やってることはへヴィメタルの人達と変わらない気もしますが。

そうですよね。むしろ、音によってはホーン隊の音の方が、直接耳に来たりもしますから。そして、これは絶対に外せない要素だと思うのですが、親子そろって鉄道ファンなんです。

鉄道ファンって…、話が脱線してませんか(笑)?

いやいや、『ガタンゴトン』って音あるじゃないですか? 僕がドラムを好きになったのって、絶対あの音のせいなんです!

そういえば、クラシック系の打楽器を担当してる方も「電車でついつい寝てしまうのは、あの『ガタンゴトン』のリズムが人間にとって気持良いからだよ」言っていました。

絶対にその通りです。実際、ドラマーって鉄道ファン多いんです。 元T-SQUAREの則竹 裕之さんや、東京スカパラダイスオーケストラの茂木 欣一さんなんかも鉄道ファンですから。

電車でリズムを意識できる人はドラマー向きということでいいでしょうか(笑)?

実際そう思いますよ(笑)。中学、高校の頃のバンドブーム期でも、みんな大体が、ギターやボーカルをチョイスすると思うのですが、僕は迷いなくドラムを選びましたもん。

鉄道マニアとドラムの関係が真実を帯びてきました…。ちなみにバンドをやるまではドラムをやってなかったのですか?

ドラムはやってませんが、小学校では鼓笛隊で小太鼓をやってました。クラスで選抜試験があるんですが、小太鼓を志願して、いざ叩いたら、初めてスティックをさわるのに、なぜか叩けたんです。それって、きっと電車のおかげです!

すごい解釈になってきましたが…(笑)。ちなみに何線に乗っていたんですか?

最寄りが駒込でしたので山手線です。ただ、近くにある列車の車庫の「尾久客車区」と「田端機関区」がもっともロマンを感じる場所でしたね。

山手線のおかげでドラマーなんですね(笑)。では、話を戻して…、初めて組んだバンドはどのようなバンドですか?

BOØWYのコピーバンドです。もう、上手いバンドとか上手いドラマーになりたかったんじゃなくって、高橋まことさんそのものになりたかったんです。

鬼の縦ノリですね。

そして若干の前傾姿勢です。でも、あのドラムってあの人しか出来ないんですよね。

『原子のドラム』ですからね!高校卒業後も音楽活動を?

いえ、親父が板前だったので、僕も板前になりました。

そっちにいきましたか(笑)。

しばらくの間、東京で板前をしてましたが、当時の彼女が神戸にいましたので、一緒に住もうということで神戸で板前を始めました。でも、その時、ちょうど神戸大震災が来ちゃったんです…。

ええ! お店は大丈夫だったのですか…?

それはもう平べったくなってましたよ(笑)。

笑っちゃいけないけど、そんな言い方されると…(笑)。

ちょっと板前の話をすると、料理の世界にもドラムマガジンのような専門月刊誌があるんですが、先輩たちに、そういった本をちゃんとチェックするよう言われてました。でも、本屋にいくと、ついついドラムマガジンを立ち読みしてる自分がいて、そんな状態の時に地震が来て…、その後、何もなくなったときに選んだのがドラムだったんです。

ゼロになったからこそ、自分が一番好きなものが見えたのかもしれませんね。

そういう事なんだと思います。まあ、親父には「うまいことズラかった」とも言われましたけどね(笑)。

その後、東京に来たのですか?

いや、まずは神戸で本気のバンドをやっていました。でも、神戸は狭い街ですから、本気で売れるには東京に行かなければ駄目だということで東京にきました。僕個人としては帰郷という形になります。

なるほど。それからはバンド活動メインで?

そうですね。去年、バンドが休止するまではずっとやってました。今は新しいバンドも組んでます。今まで演奏の時は酒を飲まなかったのですが、今のバンドではリハ前に1本、リハ後にも1本、ステージドリンクもお酒ってスタイルでバンドをやってます。

どんなに立派な機材や設備で練習しようとも、ライブハウスに同じ機材はないんです。

では、スタジオの話に戻りますが、リハーサルスタジオ激戦区の渋谷です。店舗数が増えることは影響ありますか?

影響します! 最近も新しいスタジオさんが出来て、あからさまにお客さんが目減りしました。そう思うと、やっぱり利用者数って一定なんだと思います。それらが各スタジオに割り振られてるんだと思います。

やはり、大手のスタジオなんかは影響が大きいですか?

それが意外に、大きいところよりも、個人経営のスタジオさんが出来てからの方が、露骨にお客さんが減りました。やはり、新しくスタジオを作る際は、周りのスタジオさんの値段設定も考慮してオープンしますからね。それは至極当然のことですし。それに、文句を言う気などはありません。

ライブハウスは店舗数が増えた方が活性化するらしいんですけどね。

渋谷みたいな大きい街でなら店舗数は増えていいと思います。うちもお客さんは減りましたが、それでも、他のスタジオさんが空いてない時は、じゃあSOUND MARKETにしようと思ってくれるお客さんもいるはずです。ライブハウスの方が、個性や好き嫌いが出やすいから厳しいんじゃないでしょうか?

確かに知らないライブハウスに出るには色々準備も必要ですね。これも地域や条件によって異なってくるのかもしれません年。では最後になりますが、SOUND MARKETさんからメッセージなどありましたらお願いします。

うちは、特別な機材があるわけでもないし、最新鋭の設備があるわけでもありません。そこそこの安さと、そこそこの使いやすさでありますので、よそがいっぱいだったらウチを使うというスタンスでも構いません。ただ、これは強く言いたいことですが、どんなに立派な機材や設備で練習しようとも、ライブハウスに同じ機材はないんです。ライブハウスでは違う音がするんです。それは、自分の機材を持ちこんでも同じ話。だから、機材に振り回されないでほしい。

確かにそうですね。場所が変わると音は激変します。

なので、様々なシチュエーションを想定して、どこでも同じ音が出せるような研究、そしてビジョンをもって機材に向かって欲しい。耳をちゃんと鍛えましょう!

耳で覚えたものを頼りに臨機応変に対応できる技術ですね。

頼る時はPAさんに頼るといいです。聴きづらい箱だったら、モニターを少し強めに返してもらうとか、現場での総合力も身に付けることが大事だと思います。

現場を活用する総合力、当然それも実力ですね。

そして、あと一つ! スタジオをどのように使ってもいいですから、終わった時は、ちゃんと元の状態に戻してから帰って下さい(笑)。次にスタジオを使う人の事も考えて頂くと助かります。片づけに時間を割いてしまっても、その時間も次のお客さんがお金を払っているわけですから。不備には対応しますので、何卒そこだけはお願いいたします。

これは多くのスタジオ利用者が直面する現実的な問題ですし、全くその通りだと思います。こういうスタジオの声を届けるのも、僕たちの使命です。本日は貴重なお話をありがとうございました。

こちらこそありがとうございました。

渋谷サウンドマーケット公式サイトはこちらから。

インタビュー&ライター 浅井陽 BLOG / Twitter(取材日 2015年10月)

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