音楽スタジオファイル Vol.19

吉祥寺 sound studio kicca

sound studio kicca について
2014年11月吉祥寺駅南口徒歩3分のロケーション(旧FESTA)にオープンしたスタジオ。バンドリハーサルから本格的なレコーディングまで、オーナーである長竹篤史氏の「音楽を楽しんで制作す」のポリシーが具現化されており、同社が運営する『Ato4 Sound Factory』との連携により、音源制作からリリースのバックアップまで一貫して対応。リハーサルスタジオ3部屋と、16帖のレコーディング・コントロールルームを完備。ギター、ベース、ドラム、ボーカルのレッスンも開講している。
sound studio kicca お問い合わせ
sound studio kicca公式サイト
武蔵野市吉祥寺南町2-10-14 ベル吉祥寺B1F
TEL:0422-76-8615
受付時間:AM10:00〜PM11:00

リハスタの中の人に話を聞いてみた〜 sound studio kicca編

このコーナーは音楽スタジオでミュージシャンをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

kicca / Ato4 Sound Factory 代表取締役・サウンドエンジニア 長竹篤史氏
kicca公式サイト - facebook / Ato4SoundFactory公式サイト

吉祥寺のサウンドスタジオキッカ代表、長竹篤史さんにお話を伺います。よろしくお願いします。まずはkiccaオープンの経緯を聞かせて下さい。

昨年(2014年)11月にオープンしました。それまで、ここはSOUND STUDIO FESTAというスタジオでしたが、昨年の夏に居抜きで空きスタジオになるという話を聞いて、居抜きで引き継ぐ形で開店しました。

FESTAさんとは何か接点があったのですか?

FESTAは僕の地元でもある埼玉県新所沢の本店と吉祥寺店があって、どちらの店舗も、バンド練習で利用していたのでオーナーさんとは知り合いでした。でも、吉祥寺店が売りに出される話が直接僕に来たわけ訳ではありません。別に動いていたみたいですけど、もしよければお願いします、ということで僕が手を上げさせていただきました。なので、オーナーさんも僕にスタジオを渡すなんて思っていなかったと思います。

吉祥寺という場所を選んだ理由は?

音楽が盛んな街ですからね。それと、父親も音楽関連の会社を経営していて以前吉祥寺に事務所を構えていたということや、気心知れたライブハウスが近くにあるということ等など、いろいろと条件的によかったので決めました。

「このチャンスは二度と来ない。やるなら今だ!」と思った。

FESTAさんなどとのご縁もあって、良いタイミングでオープンできた?

スタジオをやりたいという夢はずっと持っていましたが、いつも「今じゃないな」と思っていました。今回は「このチャンスは二度と来ない。やるなら今だ!」と思い、一気に動きました。ライブハウスの吉祥寺クレッシェンドにも相談に行きました。

吉祥寺クレッシェンド、メタル系で有名なハコですね。

クレッシェンドさんはライブハウス単独経営で、スタジオ業務には携わっていないということもあって、全面的にバックアップしてくれると仰ってくれました。そのような協力もあり、何の蓄えも計画もありませんでしたが、この話があったのが8月末で、9月末には契約しました。

早い決断でしたね。クレッシェンドさんと提携しているという感じでしょうか?

正式な業務提携という形ではありませんが、地方のバンドがライブ前にリハしたいって時などに受け入れたり、イベントをやるときには協賛を出したりという間柄です。それに僕はメタルのバンドをやっていて、吉祥寺クレッシェンドはもっとも出演しているライブハウスでもあります。

長竹さんメタラーだったのですね! スタジオの話に戻りますが、居抜きで入って改装はどのくらい行ったのですか?

基本的にはそのままです。新しいスタジオだという雰囲気を出せればと思って、ロビーの入口の壁をオレンジから青に塗り替え、家具も変えました。スタジオの構造などもゆくゆくは変えたいなと思っていますが、今はそこまで手が回っていません。

とてもきれない内装で、メタラーオーナーが経営しているとは思えない美しさです(笑)。

ああ、それは僕じゃなくて、うちのカミさんの力です(笑)。ロゴやデザインは本職でウェブ系の仕事をやっている妻がやってくれています。カミさんもギタリストなので、唯一のあがきがエントランスのフライングVです。あそこはフライングVじゃなきゃダメだって言うんで(笑)。

奥様、頼もしいですね! 他にもスタジオ経営を始める際に気を付けたことなどはありますか?

あれよあれよという間にオープンすることになって、見よう見真似で運営を始めたというのが正直な所です。自分がバンドでスタジオを利用してきた中で「スタッフの対応がもっとこうなったらいいのになあ…」など、モヤモヤを感じたこともあるので、ここではそうならないように注意して、常に「自分だったらこうする」という意識を持ちながら運営しています。

音楽制作に関連サービスのAto4 Sound Factory(アトヨンサウンドファクトリー)について教えてください。

Ato4 Sound Factoryは僕の個人事業時代からの屋号で、起業してから5年になります。当時の夢がライブハウスやスタジオを持つことだったのですが、いきなりライブハウスやスタジオを持つのは難しかったので、レコーディング、プロモーションビデオ、ライブ撮影&録音等、人とサービスさえあれば、現場に行って出来るアーティストのサポートをする事業から始めました。

バンドマンにとって必須のサービスですね。

僕は音関係の会社に勤めていたので事業立ち上げ後にカメラマンや映像編集する人達と一緒にフリーランスの集団を作ろうとしましたが、個人名で活動するとナメられると思って(笑)、Ato4 Sound Factoryという名前を付けました。

会社員時代はどのような仕事をされていたのですか?

ライブレコーディング専門の会社に就職して、メジャーアーティストのライブDVD、音楽番組の生放送、フェスの映像などを製作していました。たとえばテレビ番組などで音楽を流すために、ホールPAの音ではなくて、音声中継車で別途放送用のミックスをして流すような現場です。これは今でも、繁忙期は依頼があって、夏期や年末の大型フェス等を手伝いに行っています。

なるほど、ではプロ現場の音響事業にかかわってきたのですね。

はい、いろんな現場を全部見た上で、敢えて今のターゲット層でスタジオをやりたいと思っています。結局、どんなに頑張っても「上」に敵う訳がない、という割り切りで今のスタジオのスタンスがあります。

「音楽活動していてよかった」と思ってもらえることの方がうれしい。

「上」というのを具体的に聴いてもいいですか?

たとえば大手レコード会社のメジャーなスタジオですね。高価な機材のあるスタジオを見てきましたから、自分一人の力では、そういう機材を集めることが出来ないというのは理解しています。なので、大きいスタジオに勝ちたいとかそういう気はまったくないんですよね。大きなものは大きな所でやってもらって、うちはうちでできることをやろうと。

自社の立ち位置を明確にしていると。

僕は、良い音とはこういう音なんだとか、こんな機材じゃ制作出来ないっていう、スタジオやエンジニア側のエゴに対しては反対派です。それより、今ここにある機材でベストの物を作ろうと思ってます。それでも、カメラマンとか映像チームからも、作品のクオリティを上げたいという話も出ますが、そういう時は「結局それが誰のためなのか?」という視点を持つようにしています。制作サイドの自己満足のためのクオリティ追求だったら、うちのサービスとしては不正解なのです。

お客さん側も、金銭的にもステップ的にも色々な手段や目的がありますからね。

うちのスタジオのベストで十分喜んでくださっているお客さんも多い。それを制作チームのエゴによってお客さんを困らせるくらいなら、それは別の話になってしまいます。それ以上を求めるなら、もっとお金出して高い所で作ればいいんじゃない?というスタンスです。そういう位置付けに対して背伸びをする必要はないと思っています。

作り手としては制約や制限がある方が到達地点を明確にしやすくなることもあります。

そうですね、その方が意外に面白いものが出来ることありますね。うちのスタジオのターゲットはインディーズ、アマチュア、社会人などのお客さんなので、売ることだけが目的ではなくて、レコーディングがしたいだとか、PVを撮りたいだとか、どちらかというと、その制作過程を楽しむ方達が多いんです。それが楽しい思い出になれば、作品が極端にハイクオリティでなくてもいいと思います。それよりは「音楽活動していてよかった」と思ってもらえることの方が、僕としては嬉しいことです。

では次の質問になります。長竹さんと音楽の出会いは?

父親の影響が大きいです。先にも言いましたが、父は、楽器屋から始まり、メジャーアーティストのプライベートスタジオのシステム構築など、スタジオのプランニングを生業としています。音楽業界で働く事になったのは必然なのかもしれません。

まさに音楽一家なのですね!

でも、父親の元ではすぐに働かせてもらえる訳ではなく、父の紹介でライブレコーディングの会社に就職して、その後は父の会社を手伝っていました。そうやって数社を渡り歩きメジャーな業界を見ていると「メジャーの現場で商売するよりは・・・」という思いが出てきました。

メジャーの音楽業界に居づらさみたいなものを感じた?

音楽業界はピラミッド形の業界で、その頂点で仕事をすると、単価は大きいのですが波も激しいです。そこら辺に関してはお手伝いする程度に留めて、頂点の仕事をしている人だけじゃなくて、趣味の範囲のミュージシャン達をメインのターゲットにしようと思いました。緊張感があるメジャーの仕事は達成感がありますので、もちろん嫌いではないのですが、やっぱり、「そこじゃないなあ」という思いが自分の中で芽生えてきてしまって。

若い時から頂点の仕事を知ることで、自分の場所を見つけることができたのですね。しかし、よくメジャー音楽を聴いていながらからメタルに行きましたね(笑)。

世代的にLUNA SEA とか GLAY全盛期なので(笑)。ああいう音楽をやっていると、バンド仲間の誰かしらが洋楽聴いているので、そのまま洋楽、メタルの世界に行ってしまいました。

楽器は何を担当しているのですか?

ドラムです。ツーバスですよ、もちろん(笑)。

「スタジオが潰れたら俺金持ちになるから」とスタッフには言ってます(笑)。

話はかわりますが、スタジオ経営をやってみたい人へのアドバイス的なものをお伺いしてもよいでしょうか。

タイミングもあるのですが、とにかくスタジオの居抜き物件を探すのが一番ですね。ゼロから始めるには、よっぽどお金貯めないと無理だと思います。スタジオをまともに作ったら、軽く見積もっても数千万かかってしまいます。でも、居抜きからなら1/10の費用で始められて、機材費もコストが抑えられます。居抜きならばコスト的には抜群に抑えられます。

直球なアドバイスですね(笑)。

スタジオの引き継ぎを経験してわかった事は、スタジオ経営がこけても、このまま次の候補者に売却さえできれば大きなマイナスにはならない、ということ。前オーナーから設備含め機材など、買取りという形で引き渡されているので、それなりの金額にはなります。笑いながら、「スタジオがつぶれたら俺金持ちになるから」とスタッフには言ってます(笑)。

カラクリを教えてもらっているような気分です(笑)。

ただし、絶対条件として、次の候補者、スタジオを引き継ぐ引き取り手がいないといけないんですけどね。誰もいなかったらスケルトン(店舗設備などを片付けた何もない状態)にして退出しないといけないので、そうなると莫大な資金が必要なので人生どん底になってしまうこともあります。

やはり美味しいだけの話はないのですね。恐ろしい…。

まあ、スタジオを経営したい人が見つかればバトンタッチできるので、勇気を出して飛び込んでしまえばよいのではないでしょうか。もちろん、稼働中は家賃が発生するので、事業計画は立てないといけませんけどね。

長竹さんが「kicca」をオープンするときには不安はありませんでしたか?

Ato4 Sound Factoryでの売り上げがある状態でスタジオを始められたのも良かったですね。起業した時にも、父から「スタジオの他にも+αの何かがあった方が良い」と言われていました。正直、経営的には今はまだスタジオ運営だけでは難しい。Ato4 Sound Factoryという「+α」があるので成り立っている部分があります。

スタジオとの相乗効果もありそうですね。

kiccaでレコーディングをしたバンドが、Ato4 Sound FactoryでPVを撮り、レコ発をして、そのリリースライブをまたもやAto4 Sound Factoryが撮り、DVDにする。そんな風にバンドの節目ごとに関わることができ、ずっと一緒に付き合っていけるのはもちろんうれしいですし、確かに経営的にも相乗効果はありますね。

スタジオからリリースまで一貫したサービスはお客さんにとっても便利ですね。では、最後にメッセージをなどありましたらお願いします。

うちのお客さんは、大手のスタジオさんも使った上でkiccaが良いって言ってくれるお客さんが多いです。なので、これからも「スタジオを使うならkiccaを使いたい」って思ってもらえるような場所にしたいと思っています。せっかく小さいスタジオなので、色々と話もできますからね。

本日は貴重なお話をありがとうございました

(写真)sound studio kicca スタジオマネージャー 川井龍星 氏

吉祥寺駅南口徒歩3分のリハーサル&レコーディング・スタジオ sound studio kicca 公式サイトはこちらから。facebookもフォロー

インタビュー&ライター 浅井陽 BLOG / Twitter(取材日 2015年12月)

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吉祥寺駅(東京都武蔵野市)
吉祥寺
東京の住みたい街ランキング上位ランクインの常連の街だが、ライブハウス、ジャズ喫茶、演劇小屋といったサブカルチャー発信地として文化も根付くディープな街でもある。駅周辺の開発は都心ターミナル駅レベルに進んでおり、あらゆる意味で注目されている街。
新所沢SOUND STUDIO FESTA
西武新宿線新所沢駅から徒歩2分の音楽スタジオ。グランドピアノ設置の20帖Aルームをはじめスタジオ5部屋を用意。バンドリハーサルの他、野外コンサートから学園祭までのPA・機材レンタル、スクールなども行う。kicca吉祥寺店の前店舗。現在は本店の新所沢で運営中。
吉祥寺クレッシェンド

インディーズメタルの聖地と称される吉祥寺のライブハウス。クレッシェンドが主催伝統的なメタル系総合イベント「LOUD&PROUD」は20年続いている。kicca吉祥寺店との交流を持ち、サポートしあう関係である。